パワートレーニングがロードバイクの練習として多くのサイクリストに導入されてきています。もはや、パワーメーターがないと練習にならないという方も多くいます。実際に私自身も、パワーメーターがないと練習をする気力がわきません。
そのパワートレーニングで最もよく目にする言葉が「FTP」です。パワートレーニング初心者の方にとってFTPはわかりにくい言葉です。
- パワートレーニングについての知識を深めることができる
- 「FTP」の意味を正しい解釈で理解することができる
- FTPの測定ができるようになる
今回は、このようなポイントに重点を置いて、詳しくFTPについての解説を行っていきます。
そもそもパワートレーニングとは?
FTPという言葉を理解する前に、パワートレーニングの概要について知っておく必要があります。パワートレーニングの概要や、現在のロードバイク界でのパワートレーニングの位置づけなどの知っておきましょう。
パワーメーターを利用したトレーニング
パワートレーニングは、パワーメータというアイテムでパワー測定しながら行うトレーニングです。パワーメーターはさまざまな製品が販売されており、クランクに内蔵されているものや、ペダルに内蔵しているパワーメーターもあります。
それぞれに特徴がありますが、クランク内蔵型が一番主流になっている印象があります。パワーの単位はW【ワット】で表記されます。
心拍計よりも正確なトレーニングが可能
心拍計で心拍数をベースにトレーニングすることが今までの主流でした。しかし、心拍数は運動に対する生理的な身体反応です。そのため、どうしても運動負荷の変化と心拍数の変化にタイムラグが生じていました。
それに対して、パワーメーターはリアルタイムでライダーが出力しているパワーを表示するため、即時的に正確なトレーニングが行えます。
現在のトレーニング手法のトレンド
パワートレーニングは、プロ選手が中心に取り組んでいた練習方法でした。しかし、パワーメーターが市販されるようになってからは、アマチュアライダーでも容易に使用できるようになっています。
そのため、トレーニングの手法としてパワートレーニングがトレンドになってきています。なかには、トレーニング以外でパワーメーターを使用される方もいます。
FTPというワードの意味は?
では、いよいよ今回のメイン部分話をしていきます。まずは、パワートレーニングでよく目にする「FTP」の意味についての説明をしますので、しっかりと解釈できるようになりましょう。
1時間出し続けられるパワー
FTPは英語で表記されているため、少し難しく聞こえる場合もあるかもしれませんが、その意味は「1時間に出力できる平均パワー」です。それ以上でも、それ以下でもありません。
1時間に出力可能なパワーをFTPと解釈すれば大丈夫です。もし、どこかで「FTP200W」と言っている方がいたら、「あーこの方は1時間を200Wで走れるんだな」と思って間違いはありません。
ライダーの戦闘力の指標
今までのトレーニング手法では、ヒルクライムのタイムなどでほかの方と比べることしかできませんでした。しかし、FTPという概念が生まれてからは、FTPの値そのものがそのライダーの力を示す指標になりました。
そのため、FTPというパワーを利用してほかの方と比べられるようになりました。
パワー領域を計算することにも利用される
パワートレーニングでは、目的ごとにパワー領域を分割して、目的となる領域のパワートレーニングを取り組みます。パワー領域を分割することで、効率的に目的に沿ったトレーニングができるようになりました。
パワー領域は、「FTPに対する割合」で計算されているため、FTPはパワートレーニングの指標にもなっているともいえます。
FTPがロードバイクで重要視される理由
FTPの意味が、「1時間出力可能なパワー」ということをお分かりいただけたでしょうか? しかし、なぜパワートレーニングにおいてそこまで「FTPが~」などといわれることが多いのでしょうか?
次は、FTPがパワートレーニングにおいて重要視されている理由について触れていきましょう。
重要視される理由①FTPが高い=単純に強い
FTPは同じ条件下で出力できるパワーを数値として示しています。そのため、ほかのライダー間でFTPの数値を比べることで、実力差をみることができます。もしも、自分と同じような体系の方で、自分よりもFTPが高い方がいたとします。
その場合は、自分よりもFTPが高いため、単純にその方の方が強いと判断できます。FTPは、自分の実力を示すものなので、誰もが向上させようと努力しています。
重要視される理由②自分の成長を把握できる
FTPは他のライダーの方との力比べができるといいました。しかし、FTPは自分の実力の変化を把握することにも使えます。
パワートレーニングに励むことで、FTPが向上することは、純粋に自分の成長を意味します。自分の成長を感じやすくなるツールとしてもFTPは利用されています。
重要視される理由③トレーニングを管理できる
パワートレーニングにおいて、パワー領域の計算は重要です。パワートレーニングの土台となるパワー領域の計算にFTPが使用されています。また、トレーニング中の疲労指数(TSS)の計算など、パワートレーニングを管理していくための数値の多くがFTPの値が計算式に組み込まれています。
そのため、FTPはパワートレーニングにおいてなくてはならない存在です。
FTPを高めるための練習方法はこちらの記事もご覧ください
FTPの測定方法
パワートレーニングにおいても、実力差をはかるためにも重要なFTPですが、どのように測定すればいいのでしょうか? 測定方法には大きく分けて3つあります。それぞれにメリットやデメリットがあるため、自分に合った方法で測定するといいでしょう。
測定方法①1時間全力走
1時間全力走での測定は一番シンプルです。FTPは1時間出力可能な平均パワーを示すものなので、単純に1時間全力走をしたときのパワーをFTPとして記録します。
いたってシンプルな方法ですが、1時間という長い時間を全力で漕ぎ続けることは、非常に苦痛を伴います。また、信号待ちなどのさまざまなことに影響されるため、環境を選ぶ必要もあります。
測定方法②20分走
次は、20分走でFTPを測定する方法です。20分間全力で走ったときの平均ワットに0.95をかけた値がFTPとなります。1時間走よりも短い時間で完了するため、1時間走が難しい方は、20分走で測定するといいでしょう。
私もいつもローラーやヒルクライムで20分走を実施して、FTP測定を行っています。
測定方法③ランプテスト(負荷漸増運動)
最後に紹介する測定方法は、ランプ負荷試験です。1分ごとに出力するパワーを上昇させていき、限界がきて出力できなくなったときの値からFTPを測定します。
20分走よりもさらに短い時間で計測できます。しかし、一定の負荷をかけ続けて、出力するパワーを管理するスマートローラーなどの機材が使いで必要になるという、欠点があります。
FTPの解釈における注意点
パワートレーニングで重要なFTPですが、「FTPがすべて」と間違った解釈をしている方も多くみかけます。FTPは非常に重要ですが、その方の「強さ」を示すものは、FTPだけではありません。
解釈の注意点①必ずしもFTP=速いではない
FTPは誰しもが測定して、把握することができるパワーですが、FTPが高い人がすべて強いというわけではありません。人間の身体は、体重に比例して筋肉量も多くなっています。そのため、基本的に体が大きい方のほうが、FTPは高いです。
しかし、ロードバイクでは、体重に対するFTPの割合(パワーウェイトレシオ)も重要です。すなわち、体重とFTPのバランスが非常に大切です。
解釈の注意点②FTPは指標の一つにしかすぎない
FTPやパワーウェイトレシオが高い方は、確かに強いといえるでしょう。しかし、実際のレースなどでは、ペースの上がり下がりがあります。
インターバルのような運動が繰り返されるため、インターバル耐性など、FTP以外にも大切な能力は多くあります。FTPはあくまでも指標の一つだということを忘れてはいけません。
解釈の注意点③パワーはあくまでも目安
出力しているパワーをパワーメーターで計測してトレーニングを行います。しかし、パワーメーターもさまざまな製品が販売されています。製品間での誤差などももちろんあります。
そのため、パワーがすべてを意味しているのではなく、あくまでも「測定された目安の数値」だということも覚えていきましょう。
まとめ
FTPはパワートレーニングにとても大切!でもFTPがすべてではない!
今回は、ロードバイクでのパワートレーニングでよく目にする「FTP」というワードについての解説や、測定方法を紹介しました。FTPはライダー間での実力比較や、自分の成長を知るためにはとても大切な数値です。
しかし、FTPがすべてではありません。パワーウェイトレシオやインターバル耐性などさまざまな要素が絡んで、強くなります。FTPだけにこだわらないようにしていきましょう!
コメント